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【地域別医療提供体制の現状】 東北地区 |
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東北地区
青森県の医療提供体制
その特徴は(1)豊富な病院数、潤沢な病床と看護師、不足気味の医師、(2)津軽(弘前)、八戸、青森に医療資源が分散的に集中、(3)全国でトップクラスの介護受け入れ態勢です。
特徴 (1)豊富な病院数、潤沢な病床と看護師数、不足気味の医師
青森県の人口当たりの病院数の偏差値は52、診療所数は44、病院勤務医数が46、診療所医師が43と、他県と比べて比較的医療提供体制が整っているといえます。また、診療所では、有床診療所が占める割合が高く、全体の26%にまでのぼります。さらに総病床数の偏差値が51、一般病床が52と全国平均よりも若干高めです。
そして、有床診療所の病床数の偏差値は県全体が64と高く、特に津軽地域と青森地域は70を超えています。
また県全体の人口当たりの総看護師数の偏差値が54と全国平均よりも高く、病床数と看護師数は多い一方、医師数と全身麻酔件数は偏差値50以下と不足しています。
特徴 (2)津軽(弘前)、八戸、青森に医療資源が分散的に集中
総医師数の偏差値は津軽(弘前)54、八戸44、青森46で津軽だけが全国平均を超えています。これらのエリアでの看護師数はいずれも偏差値が50以上で、全身麻酔件数は津軽(弘前)58、八戸48、青森50とこれら3つの拠点都市に医療資源が分散的に集中しています。
これ以外の地域は、病院勤務医数、全身麻酔件数、総看護師数がいずれも偏差値50を下回っており、全体に医療資源が少なくなっています。しかし1つの都市に医療資源が集中している都道府県と比べると3つの拠点都市があり、そのいずれかに、どの地域からもアクセスが比較的しやすい状況です。
特徴 (3)全国でトップクラスの介護受け入れ態勢
青森県の総高齢者ベッド数の偏差値は59、高齢者住宅数の偏差値は60と施設による介護の受け入れ態勢は全国でもトップクラスです。特に総高齢者ベッド数は下北地域を除くすべての医療提供エリアで偏差値50を超えており、津軽(弘前)と青森は偏差値65以上と著しく高くなっています。
在宅医療は、在支診(在宅療養支援診療所)、在支病(在宅療養支援病院)とともに全国平均を下回りますが、訪問看護ステーションは偏差値58とかなり高く、それによって、医師不足を補っているといえます。
岩手県の医療提供体制の現状
その特徴は(1)広い診療圏を各医療機関がカバーしている、(2)医師数は少ないが、病床数と看護師数は比較的多い(3)盛岡市への医療資源の集中、それ以外の地域は医師不足、(4)盛岡を中心とする県立病院ネットワーク、(5)気仙、釜石、宮古は震災への影響です。
特徴 (1)広い診療圏を各医療機関がカバーしている
岩手県は北海道に次ぐ全国で2番目の広さを誇る都道府県であり、盛岡、岩手中部、宮古は2,000平方キロメートルを超える医療提供エリアとなっています。各医療機関がカバーするべき診療圏が広く、長距離搬送が頻繁に行われています。
特徴 (2)医師数は少ないが、病床数と看護師数は比較的多い
岩手県の人口当たりの病院数の偏差値は50、診療所数は45、病院勤務医数が48、診療所医師数が43と他県と比べ、診療所よりも病院の比率がやや高い医療提供体制といえます。県全体の偏差値は、総病床数53、一般病床数49、総看護師数52と高く、総医師数は46(うち、病院勤務医数が48、診療所医師数が43)と少なく、病床数と看護師数はやや多めですが、医師数は明らかに少ない県です。
一方、岩手中部、胆江、気仙、宮古、久慈、二戸は医師数のみならず病床数と看護師数も少なく、医療資源が全般的に少ない2次医療圏(入院ベッドが地域ごとにどれだけ必要か考慮して決められる医療の地域圏)だといえます。
特徴 (3)盛岡市への医療資源の集中、それ以外の地域は医師不足
岩手県は盛岡市に人口の36%が集中していますが、総医師数の50%(病院勤務医数の53%、診療所医師数の44%)、総看護師数の44%、全身麻酔数の56%と人口比以上の医療資源が盛岡市に集中しています。その結果、それ以外の全ての医療提供エリアの総医師数の偏差値が45を下回っており、盛岡市以外は医師不足の傾向が強いといえます。
特徴 (4)盛岡を中心とする県立病院ネットワーク
広い県全域をカバーするため各地域に基幹病院となるべき県立病院が配置され、高機能の医療が必要な場合、盛岡に集まる県立病院に搬送する体制が整っています。
特徴 (5)気仙、釜石、宮古は震災への影響
もともと岩手県の三陸地域は、病院勤務医数や全身麻酔件数が少ない地域でしたが、震災以降さらに状況が悪化しています。また三陸側の医療提供エリアは盛岡への移送に時間がかかるのに対し、高度医療施設が整っている病院がほとんどないのが課題です。
宮城県の医療提供体制の現状
その特徴は(1)県北の少ない医療資源、(2)仙台に医療資源が一極集中、(3)震災の影響(特に仙台沿岸部、石巻、気仙沼エリア)です。
特徴 (1)県北の少ない医療資源
県全体の病院数の偏差値は48、診療所施設数は44といずれも偏差値50を切っていますが、相対的に病院の比重の高い医療が提供されています。県全体の偏差値は、総病床数47、一般病床数50、総看護師数47、総医師数46(うち病院勤務医数が47、診療所医師数が45)、全身麻酔件数51となっています。
病床数、医師数、看護師数がやや少ないですが、全身麻酔件数は全国平均を超えるレベル。しかし仙台より北の地域となると、病院勤務医数、全身麻酔件数、看護師数の偏差値が50を大きく下回ります。
特徴 (2)仙台に医療資源が一極集中
仙台市に人口の63%が集中していますが、一般病床の69%、総医師数の73%、総看護師の68%、全身麻酔の81%と、人口以上の割合で医療資源が集中しています。ただし仙台でも人口当たりの医師数の偏差値は49で、基幹病院がある地域でも人口当たりの医師数、看護師数、全身麻酔件数は全国平均を大きく下回ります。宮城県は基本的に医療資源が少なく、しかも仙台に集中しているため、そのしわ寄せが他の地域に及んでいるといえます。
特徴 (3)震災の影響(特に仙台沿岸部、石巻、気仙沼エリア)
石巻、気仙沼、仙南エリアは震災前から病院勤務医数、全身麻酔件数が少ない地域でしたが、震災により今まで以上に状況が悪化しています。今後この地域に医療資源を増やしていく必要があります。
秋田県の医療提供体制の現状
その特徴は(1)全国平均より高い県全体の医療資源レベル(2)秋田市への集中傾向と厚生連(厚生農業協同組合連合会)のネットワークです。
特徴 (1)全国平均より高い県全体の医療資源レベル
県全体の偏差値は、総病床数54、一般病床数57、総看護師数56、全身麻酔数51と高いですが、総医師数47(うち、病院勤務医数が49、診療所医師数が44)と、人口当たりの医師数は全国平均をやや下回っています。ただし大館・鹿角、北秋田、能代・山本、大仙・仙北、湯沢・雄勝は、総医師数の偏差値が40を切っており、医療崩壊の危機に瀕しています。
特徴 (2)秋田市への集中傾向と厚生連(厚生農業協同組合連合会)のネットワーク
秋田周辺の医療提供エリアに人口の38%が集中していますが、病院勤務医数の54%、総看護師数の43%、全身麻酔件数の48%と、人口以上の割合で医療資源が集中しています。
そのため県内には厚生連(厚生農業協同組合連合会)の病院が地域の基幹病院として存在し、地域の患者をこれらの病院が引き受け、高度な医療が必要に場合は秋田市に送るネットワークが確立されています。ただしこれらの基幹病院がある地域でも横手を除き、人口当たりの病院勤務医数の偏差値が45を下回っています。
山形県の医療提供体制の現状
その特徴は(1)全国平均値的な医療提供体制、(2)村山(山形市)と庄内の2つの拠点都市の存在です。
特徴 (1)全国平均値的な医療提供体制
県全体の偏差値は、総病床数51、一般病床53、総医師数47(うち、病院勤務医数が48、診療所医師数が46)、総看護師数52、全身麻酔件数48と全国平均レベルの医療資源をバランスよく提供している体制と言えます。
特徴 (2)村山(山形市)と庄内の2つの拠点都市の存在
村山(山形市)に人口の48%が集中していますが、総病床数の53%、総医師数の59%、総看護師数の51%、全身麻酔件数の52%と人口以上の割合で医療資源が集中しています。置賜(おきたま)エリアには置賜総合病院や米沢市民病院、最上エリアには県立新庄病院があり、ある水準までの医療は地元で提供し、高度医療が必要な患者のみ村山(山形市)に搬送しています。
一方、庄内エリアには基幹病院が2つあり、総医師数20%(偏差値42)、病院勤務医数17%(偏差値41)と医師数は少ないですが、県内の全身麻酔件数の28%を行うなど高度な医療施設があり、独立した医療提供エリアを形成しています。
福島県の医療提供体制の現状
その特徴は(1)医師が不足しているのに対して病床数と看護師数が多いこと、(2)4つの都市に医療資源が分散的集中していること、(3)相双(そうそう)地域、いわき市への震災の影響です。
特徴 (1)医師が不足しているのに対して病床数と看護師数が多いこと
全県を通しての人口当たりの総病床数の偏差値が53、一般病床数が54、総看護師数が50と全国平均を上回っていますが、総医師数が45、全身麻酔件数が47と全国平均を下回っています。
また、医療機関というより高齢者施設的な病床数が多いのが特徴です。
特徴 (2)4つの都市に医療資源が分散的集中していること
総医師数、病院勤務医数の偏差値が50を超えているのは県北(福島)のみですが、総看護師数は、県北(福島)、県中(郡山)、いわき、会津でいずれも偏差値が50を超えています。これらの地域には全身麻酔件数が年間2,000件を超える基幹病院が存在し、高度な医療を提供しています。
医療の拠点都市が4か所も存在するため、全国3位の面積の割には高度医療へのアクセスが良いといえます。ただし南会津や相双(そうそう)地域は全国的にみても医療過疎の地域であり、この地域の医療提供体制の強化が今後の課題です。
特徴 (3)相双(そうそう)地域、いわき市への震災の影響
相双(そうそう)地域のいわき市は、もともと病院勤務医数、全身麻酔件数が少ない地域でしたが、震災によって状況がさらに悪化しています。そのため医療体制の早急な強化が望まれます。
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